退院して数ヶ月後、わしは彼女の家に呼ばれた。

  「大事な話があるんだ」

   そう彼女に電話で誘われて。




『別れた後でも大切な人』************************************

  


   チャイムを鳴らすと彼女が笑顔で迎えてくれた。

  「入って」

   と彼女はスリッパを並べる。
   の笑顔は少し力ががない気がした。

   わしは何か嫌な予感がして思わず、スリッパを並べ終わって振り返った彼女を抱き締めていた。

  「晴ちゃんどうしたの?」

   彼女の声が弱々しい。
   わしはを強く抱き締めた。



   しばらくするとはわしの背中を抱き締めて

  「晴ちゃんのこと大好きだよ。あたしは大丈夫」

   と言った。

   わしはその言葉に安心して、リビングにと向かった。





   最近の話なんかしながら、の入れた紅茶を飲む。
   話をしながらも、"大事な話"がわしのどっかで引っ掛かっていた。

   それが彼女にも伝わったのか、沈黙を破りが口を開く。

  「あたしと別れて下さい」

   突然すぎて、わしは言葉が出なかった。
   やっと出た言葉が 

  「なんでなん?!」

     「あたしファッションの勉強をしたいんだ。昔からファッションデザイナーになるのが夢だったの…」

   はそう言うと立ち上がり、棚からスケッチブックを取りわしに差し出す。
   スケッチブックには鉛筆でデザインが描かれ、色鉛筆で着色されている。
   何枚もデザインは描かれていた。

     「でも…わしとおっても、夢は叶えられるよのぅ。わしは別れとぉないんよ」

     「そうかもしれない。あたし晴ちゃんが好きだから、離れたくないよ。本当は」

     「じゃあ、わしとおってよ」

     「それは…出来ないよ」

   彼女の目から大粒の涙が流れた。

     「晴ちゃんは…夢実現のために因島から大阪に出て来て、認められて東京(ここ)にいる。
                          そして今も、デビューに向けて頑張っている」

   涙を拭いて、は話続ける。

     「でも、あたしは…まだ夢に一歩も進んでない。あたし少しでも晴ちゃんみたいに、夢に近づきたい」

   涙はとめどなく流れているけど、目には力強さがあった。

     「晴ちゃんといても夢は叶うかもしれない。でも、晴ちゃんに甘えてしまうあたしがいる。
              夢が愛で一杯になったら、あたしはきっと心のどこかでそれを後悔してしまう」

     「晴ちゃんだってあたしがいたら、全力投球出来ないことだってあるかもしれない。それはあたしにも言える 」

     「大好きだから今のあたしに出来ることを。自分のためにも選んだ、あたしの進むべき選択。
                          そしたらあたしが、別れを切り出す事だった。勝手だけどね」

   彼女の目から涙はもう流れなかった。
   わしはなぜか納得してしまった。

     「そこまでわしの事、未来の事考えとったなら、わしは何も言えんね。
            だってぇ〜そんなにわしのこと考えてくれてるって、愛されとる証拠じゃろ?」

     「そうだよ。一生の別れじゃないからね。あたしは」

     「勝手じゃのぅ。忘れられんじゃんかぁ〜」

     「一時的に距離置くだけだもん!もしかしたら、最高のパートナー晴ちゃんだけかもしれないしね」

   とほんま、最後まで勝手なことを言う彼女だった。






   大事な話から一ヶ月、わしらは思いっきり恋人を楽しんだ。




   そして…別れの時。
   歩き慣れた町並みを二人、手を繋いで歩いてみる。
 
   しばらく歩くとが言った。

     「ここ、始まりの場所だね」

   そこは、わしらが出会ったバス停。

     「あの時、かごから落ちたりんごをわしが拾ったんよね」

     「うん。晴ちゃんがバスを待っていて、あたしは自転車を走らせていてさ」

     「拾ったわしに"ありがとうございます、バンドやっているんですか?"って聞いたよのぅ」

   それがわしらの出会い。
   そして…今は…。


     「懐かしいね…」

   はゆっくりと目を閉じて、ゆっくりと開いて

     「あたしたち、そろそろ行こうか?」

   と繋いだ手を離した。

     「お互い、頑張ろうの!」

     「うん。離れていても、応援しているから。また、いつかね。バイバイ!」

     「バイバイ!」

   わしらはそれぞれ別の道を歩きだす。



   "またいつか"、"バイバイ"ってまた会える気がした。







   それから一年後、わしらはポルノグラフィティとしてデビューをした。
   デビューから五年、形は変わってしまったとこもあるけれど六年目…わしは、この仕事をまだ続けるつもりだ。


   最近思うなは別れたらそれで終わりじゃなくて、生きているうちは再会も再開もあるってこと。
   その彼女もファンレターに交じって、この間コンクールで入選したことを教えてくれた。
   も頑張っているなぁ。


   別れたって、好きだった、大事な人には変わらない。
   大切な人を大事に思うから、自分を大切にする選択。
   犠牲にならず、互いに頑張ることは…
   理解してくれる大事な人なら、それを喜んでくれるし、自分の事のように嬉しいはずだ。
   自分がしっかりしないと、大事な人を守れない。
   そんな考えが、最近わかり始めたかもしれない。





     「会うことは出来ないけど、電話してみょうかな?」

     「晴一さん、りんご片手に何してるんですか?」

   マネージャーがわしに話し掛けてきた。

     「のぅ?大輔。別れた彼女と連絡とれる?」

   と質問を投げ掛けてみた。

     「えっ?どうですかね…晴一さんは?」

     「わし、意外と大丈夫よ」
 
   と答えるわしは笑顔じゃった。






                                      END






  原案04/09/23,10/02,12/05、12/13          up05/09/03






☆後編いかがでしたでしょうか?
 こんな恋ならしてみたい。
 別れって悲しいことばかりじゃないのかな?

 そんな想いで書きました。
 晴ちゃんありがとう(^▽^)

 ありがとうの意味はそのうちバックステージにUPしますよ〜。
 こんな愛いかがですか?
 ぜひ、感想お願いします。
 ラッキィとしては、今までとは違った挑戦の1つなので、気になるのです。
 リクがあれば、その後も考えるかもvv