『シンプル』



   「あれ・・・」

  目を覚ました私は、室内に漂う匂いに気付いて辺りを見回した。

   「カレーの匂い?」

  昨日の名残が残るベットを抜け出し、この部屋の住人の姿を探す。
  滅多に会えない忙しい恋人・・・。



   「晴一?」

   「おはよう、。やっと起きたか」

  綺麗に整えられたキッチンの、ずらりと並んだスパイスの林の中から彼の声が聞こえてきた。

   「どうしたの?それ」

  私はクックッと音を立てる鍋を指差し、彼を見上げる。

   「どうしたって、カレーじゃろ」

  彼は苦笑し、鍋の蓋を取った。

  
  彼は料理上手で、特にカレーには並々ならぬこだわりを持っている。
  私も何度も食べさせてもらったけど、たくさんのスパイスが入ったそれは、香りも味も私が今まで食べてきたものとは違っていた。


  それなのに・・・・・・。


   「いつものカレーと匂いが違うよ?」

   「あはは、そりゃあそうじゃろ。
    市販のカレールーを使っとるからのぅ」

  カタカタと長方形の箱を振り、彼はニヤリと笑う。


   「なんで?」

  
  私が最後まで疑問を口にしないうちに、彼はパジャマ姿の私をゆっくり抱きしめた。


   「たまには、シンプルもいいと思ってのぅ」


  そんな言葉と共に、頬に唇が落とされる。


   「が好きじゃから、一緒にいたいんじゃ。
        だから今日は、一緒にカレーを食べよう」

  シンプルな、ストレートな言葉。
  たまにはシンプルもいい、そう思いながら私は彼の背中に腕を廻した・・・・・・。





                                             End
           原案 類瀬 幸則様  2005/01/30       
 up 2005/05/03  11:00

★☆類瀬様、素敵な作品ありがとうございます。こぼれ話はバックステージにて☆Byラッキーガール