『サイクリング』


    今日は、よく晴れた日曜日。
    大好きな彼は今、お部屋で眠っております。
    ライヴが終わって、次のレコーディングアルバムが決まった。
    今年は周年、忙しくなりそうだな。
    ファンとしても応援するよ、もちろん。


    ガチャってドアが開いて、目を擦りながら彼が出てくる。
    
    「おはよ、昼ごはん?なんしょん?」

    「今、パスタ茹で終わったよ」  

    そんな平和な会話。
    2人で食べるって、やっぱいいなぁと思いながら、ミートソースをかけてテーブルに並べた。


    食後、テレビを見てた2人だったけど、内容がつまらないものばかり・・・
    
     「何かせん?何でもええど」

    「う〜ん、じゃサイクリングしてみよ」

    あんまり乗り気ではないらしい彼。

    「やっぱ、いいや タマちゃん」

    「明日 仕事じゃから、無理せんって約束じゃ!」

    そう言うと彼は小指をあたしに向けて“ゆびきり”を促す。
    彼の優しさとかわいらしさをかみしめて、あたしも差し出した。



    あたしの家から10分くらい自転車をこいで、近くの大きな橋へと着く。
    夏には花火大会があって、夜空に大きな花を咲かす。
    毎年、家の2階や河川敷に来てるけど、サイクリングロードを走るのは初めて。

    「見て〜この三つ葉、葉っぱあたしの親指くらいだよ」
   
    足元の大きな三つ葉に気付いて、あたしは足を止める。

    「子どもみたいじゃのう〜、どうせなら四つ葉見つけぇや」

    って、笑ってる。 今は"Tama"じゃなくて"白玉雅己"なのかな!?

    「でも〜昔三つ葉の大きい葉っぱ、1枚を貯金箱に入れたら、お金が貯まるっておまじないあったしさ」

    そんなあたしを「わぁ〜かった」と頷き、標識を指差し、こう言った。

    「サイクリングロードは"リクリェーション及び体力向上" じゃと・・目的が。 知っとった?」


    日曜日ということもあってか、サイクリングロードには、ジョキングをする高校生やおじさんが走る。
    犬の散歩をする人や、ウオーキングをするおばさんとすれ違う。
    河川敷では、釣りをしたり、サッカーをする小学生。 バトミントンをする女の子 が見えた。

    「へぇ〜あそこに噴水があったんだぁ〜 三輪車の練習している子がいるよ〜」

    「かわぇぇのう〜、3歳ぐらいかの?帰りに降りてみようの」

    「ピクニックモードの家族もいる あっちではバーベキューしてるっぽいね、友達 と」

    「新藤と昭仁とミニキャンプなんて、おもしろいかもの!?スゴロクも喜ぶけぇ〜」

    「それ、いいかもね〜 あたし参加してもいい?」

    なぁ〜んて会話も楽しみながら、ペダルをこぐあたし。


    橋から橋へ、走らせること15分。 次の橋に着く。 結構あっという間。

    「車は結構早いスピードよのぅ〜、自転車から見よる景色も、なんか新鮮じゃのう〜」

    「でしょ!?昨日のテレビの影響からの提案なんだけどさ」

    今回はここまでとして、スタートラインに戻ることにした。
    帰りは向かい風だったけど、彼はあたしに合わせてペダルをこいでくれる。

    「♪ジヤンジャジャジャジャ ジャジャジャジャジャジャ ジャラジャラジャラジャラ♪」

    とベースのメロディ を、あたしが口づさむと・・

    「♪君の手で〜♪」

    ってノリノリで答えてくれるタマちゃん。

    「わし、ミュージシャンよのぅ?歌っても誰も気付かんねぇ〜」

    「あははは、まさかここでサイクリング中とは思わんでしよ」


    10分ほどで、スタートラインが見えてきた。残り50メートルぐらいの所で、2人して無邪気に本気出してラストスパートをかける。
    自然と万歳をして、先にゴールに着いていた彼とタッチしてブレーキをかける。
    情けないことに息がゼェゼェ、呼吸が苦しい。
    熱くなってパーカーを脱いでTシャツになる。 風が気持ちいい!

    「大丈夫!?」なんて、お互い声かけ合ったりして、約束の河川敷へ自転車で下っていく。
    噴水の前に着くと、2人並べて自転車を止める。
    ベンチに座って、鞄からペットボトルを取り出して彼に差し出す。
    彼は一口飲んで、あたしに差し出す。 あたしも一口飲んで蓋をする。
     「いっ・せ〜の〜で!」と、2人して深呼吸。
    出発の時に噴水にいた恋人達 はもうどこかに行ってしまって、三輪車のあの子もいない。

    鞄からおかしを出して袋を開けて、あたしは口につけて息を吹く。
    "ピー" って音が響き、あたしはちょっとふざけて"ピッ ピッ ピッ" と、小鳥のように奏でるマネ。
    「止めろぅや!わし恥ずかしい」って、言われるの覚悟してたけど・・・

    「わしも・・」

    「フエラムネっておかしで、このドーナツ型の穴に息を吹き込んで・・・」

    「「ピー、ピッ ピッ ピー」」

    「ビッ 」

    「何じゃ!音がよう鳴らんぞ」

    「少しでも舐めって湿るとアウトだよ」

    あたしはそう言うと、ラムネを口の中に。
    次第に溶けて、シュワシュワと溶ける。 懐かしい味を残して
    3個で20円のセット、もう1つを彼に渡す。
    空には少し離れた所から、ラジコンど飛ぶ飛行機とトンビが舞う。
    彼は受け取って、また音を鳴らして口に含む。
    17時のチャイムが鳴り響き、音が消える。



    「今日はこうしてと一緒におれて楽しかった。
     さっき帰りにペダルこぎながらメロディ 浮かんだしのぅ こういうのも、ええね」

    「こんなあたしに付き合ってくれて、ありがとうね 雅己v」

    うわぁ〜言ってる自分が恥ずかしくなってきた。
    それが雅己にも伝染したらしい。

    「雅己って・・・調子狂うのぅ また、来ようの!」
    
    そう言って、頬にキスしてくれた。
    嬉しくてあたしも、お返しのプレゼント。

    「さぁ〜て、そろそろ帰ろうかのぅ?わし、カレーライス食べたい」

    彼は立ち上がって、手を差し伸べる。 あたしはお姫様気分で、手をとって答える。

    「もちろん、タマちゃんの手作りね☆」

    「わし・・・1人?!も手伝ってくれん?」


    そんな会話をしながら、家路へと向かった。



End


原案 2004/05/23       up 2005/03/12