あぁ、うまく行かないもんよね。
 せっかく晴一に声かけようと勇気を出すことに決めたのに…。

                『いじわるな落書き 5』



  「はい、お仕事追加じゃって。
   今日出来る分だけやれって言うんよ。
   …今日借りる人とか少ないからやって」

  「ほんま?!ツイてない」


 結局18時過ぎまで、ちょっとまじめにやった。


 じゃけぇ、グランドには野球部員は数人おるけど片付け始めとる。
 戸締まり早くやれば間に合うじゃろうか?
 遅く来たけぇ、一人で戸締まりやっとったら廊下を走る音が聞こえドアがガラっと音を立てて開いた。


  「すいません、返しに来たん…じゃけど…」


 息を切らして走って来たのは、赤いボウス頭の野球のユニフォームを着た男子。



  「…晴一…」

  「……。お前図書委員じゃったん?」

  「う、うん。返却?」

 昼のことがあったから、まともに顔が見れん。
 怒ってるんじゃろうか?

 中学生の頃から本はよく読んどったけど、今も好きなんじゃ。


  「クラス違うけぇ知らんかった。
    中学の時もやっとったのぅ?」

  「えっ?」

  「お前さぁ〜隣の席だったことも忘れたん?
                わし覚えとうよ」

 覚えとうよ。
 でもそんなにあの時は話さなかったから、その一言がうちにとっては…。

  「うちも覚えてるよ。
   ちょっと…
   嬉しかったけぇ…
   そのありがとう。
   それと…さっきはごめん!」

 しばらくの沈黙があって、ちょっと照れくさそうに

  「ぁ、うん」

 と返事をして

  「わし、まだ片付けあるけぇ、また」

 晴一は図書館を去って行った。



 やっと言えた一言と、また繋がっていけそうな予感がしてうちは嬉しさを隠せんかった。
 一人っきりの図書館で、照れ笑いをした。



                             続く…

   原案 07/08/30〜09/01            UP 07/09/04




 ☆ベアーズのプロモ見たらますます書きたくなってきたじゃんか(笑)
  若いっていろいろと悩むもんですなぁ。
  アクシデントはうまく使う、それもまた手ですな(と何を言うてるねんな)。
  二人はどう進む?