『ビスコ』
あぁ〜なんかせっかくの休日なのに
彼は今日も仕事かぁ。
この間会ったときも
あたしは笑顔で見送った。
仕事に行くのは認めている。ファンの1人としてやっぱりファンには姿を見せて欲しいから。
あたしだけの”昭仁”ではないんだから。
ポルノグラフィティのボーカルとお付き合い出来たことは
とってもありがたいことだもん。
ポルノファン・・・いや
昭仁ファンのことを考えると・・・やっぱりありがたいことだ。
とてもファンには言えやしない。みんなの”昭仁”だから。
気分転換に近くの公園に行くことにした。
お昼も食べたし
家にいたって考えちゃうし。
自転車にしょうかな〜って思ったけど
風がとっても気持ちいい!歩いて食後の運動も兼ねましょ。
しばらく歩くと
あたしは足を止めた。
ほら!たんぽぽが綿毛になっている。
昨日はなんであんなに急いで歩いてたんだろうー。
車を飛ばして時間に追われて些細なことにも気づかなかったな〜。
10分ほど歩くと目的地の公園に着く。
ここは結構大きめのところで
春には何種類かの桜が咲きピンク色になる。
秋には神社のお祭りで紅葉で人がたくさん集まるんだ。
おじいちゃんやおばあちゃんたちはゲートボール。原っぱではキャッチボールをする親子。
うわ〜初めてみたよ!ここの公園でゴルフ練習するおじさん。何もここでね〜
グラウンドでは草野球。フェンスごしに
あたしはボールの行方を追う。
クロゴスの活動日は
今度いつだろう?
雅己君がベンチから眺めるグラウンドには・・・
晴一君がピッチャーで
キャッチャーは・・・・昭仁。
ふと考えちゃった
また。あたしはその場から離れ
噴水へ向かう。
中央の噴水は
まだ下にちょろちょろ流れる程度だったけど・・小学生がはしゃいでいる。
ベンチに座りながら
あたしは自然と笑みを浮かべ彼らを眺める。
あたしは持ってきたMDを聞きながら
ビスコの袋を開け口にする。
懐かしい味がする。
5個入りのビスコ・・最後のビスコを口にした時
懐かしい声がイヤホンから聞こえたー。
軽快なギターとベースに乗せて。
今のあたしを見透かすような
訴えるかのような言葉を乗せて。
♪精一杯 強がっている君のこと♪
気付いたら頬に涙が流れていた。
夕日が目に染みたなんて・・あたしは自分をごまかそうとしたけれど・・ごまかせなかった。
あたしはやっぱり・・・・
片耳のイヤホンがとれて
「やっぱり
ここにいたんじゃ」
って優しい
懐かしい声にあたしは振り返る。
仕事をしているはずの彼がそこにいた。
あたしの目から雫がこぼれて
彼の姿はにじんで見えなくなった。
彼はあたしの頬から雫を拭き取り
イヤホンから流れる曲に耳を傾ける。
「わしは
のこと忘れとうないよ」
そう言って
あたしを優しく抱きしめてくれた。
涙が止まらない・・
悲しいんじゃない
今のは嬉し泣きだ。
あたしは彼に
れられて
噴水の前に行く。
夕日が沈みそうになっていた。
あたしは噴水のブロックの石の先に着くと
ちょっと下からあたしを見ている彼へと向き直る。あたしは言った。
「昭仁はあたしのビスコだよ」
「えっ?ビスコって・・どういう意味じゃ!」
彼は笑いながら
あたしに一歩一歩近づく。
ミュージシャンの”昭仁”じゃない
”岡野 昭仁”だ!
「ひみつv」
はにかむあたしに彼は優しい魔法のキスをくれた。
「食べる?」
あたしはビスコを鞄から取り出して
赤く変わっていく顔を気づかれないように・・って彼に差し出す。
「懐かしい」
なんて言いながら彼はビスコを口にして
あたし達は歩き出す。彼は言葉を続ける。
「優しくて
温かくて
安心するのぅ・・?・・って・・これが・・わし?」
それを聞いたあたしは
心から笑顔になる。
「ほぼ正解!」
「ほぼって何じゃ!!」
ってあたし抱き寄せられて
頭ぐりぐりされました
ーだって
大好きなあなたに会いたくなる
帰る場所を教えてくれたー
って答えもだもんね♪言ったら
昭仁喜ぶかなぁ〜
そんなことを考えてたら
彼は手を止めた。
あたしに向かい合い
真剣なまなざしで言った。
「のぅ・・。泣きたい時
つらい時。寂しいって
助けてってサイン
わしに素直に示して欲しいんじゃ。
さっきみたいに一人で抱えこまんと
泣いて教えてくれていいんよ」
あたしは
彼のまなざしから目が離せなくなっていく。
「言葉で
行動でわしにサインを示して欲しい。どんな小さなサインでも見逃したくないんよね
わしは」
「わかった・・ごめんね。あたしの全てを受け入れて下さい」
「わしも伝えるように努力するからの!わしのことも
受け入れて欲しいんじゃ。
ミュージシャンとしての前に
お前(まぁ)の彼氏なんじゃから」
少し照れながら彼はあたしの頭をポンと叩く。
「わしの分も
買(こぉ)て
帰ろうや」
「いろんな味があるんだよ
どれ買おうか?
そんな会話をしながら
近くのスーパーへ。
End
原案 2004/05/22 up 2005/03/12